NICOとスピッツと私と

NICOが先か、Spitzが先か。

“N X A” TOUR -Funny Side-OSAKA FESTIVAL HALL

 

20181023日(日)

 

 

 

NICO Touches the Wallsフェスティバルホールに立つ。

 遂に憧れたこの日が来て、

 ステージに立つのは私だったかなと

思うほどに体中が緊張していた。

 

 

 

1700過ぎ、

 地下道を歩く自分の足音がカツンカツンと響く。

 今日はいつものスニーカーではない。

 足に馴染んだ23区のローファー。

 

 冷たい地下道の風に絡んで揺れているのは、

 今日はグッズのTシャツでもない。

 Funny Side Up風味の古着っぽいのワンピース。

 今日という日はいつもより

少し特別に過ごしたかったし 今日が過去になっても、

あの赤い絨毯が眩しい客席の上に、

 少しでも濃厚にその日に存在してやりたいと思った。

  

 地下道を抜ければ、

 秋の夕暮れとフェスティバルホールコントラスト。

 昨日の夜

 「明日の天気を心配しなくていいことが幸せ」

 と噛み締めたこをと思い返す。

 天候に振り回されてきたこのツアーの

 極々わずかな濁りを回収するかのような空の下、

 固いステップでFunny Sideへと川を渡った。

  

心臓はMAX値の天地ガエシの様に早くて

高鳴れば高鳴るほどに冷たくなる手を握って席に着く。

個人的には何度も来ているはずのホール。

でも感じるのは安らぎではなくて焦燥に近い。

願いが叶うということは一つの終わりでもあるわけで。

息を吐いても吐いても、

私の中で膨らみ切った今日という日への思いで苦しい。

偉大なそのホールで一人定刻を待った。

  

NICO Touches the Walls

フェスティバルホールに立ってほしい。

その願いが叶い続けた、

2間ほどの<TWIST&SHOUTSHOW

 

 正直、フェスティバルホールでは

しばらくライブを見たくない。

スピッツはツアーでよく

フェスティバルホールを使用するけれど、

スピッツであってもちょっと時間を

空けてほしいと思うほど。

それくらい素敵で温かくて強くて

柔らかくて眩しい瞬間の連続だった。

 

OYSTERリリースからNXAツアーの

1年間を掛けてぶっ壊してきた

 NICO Touches the Walls自身の壁、

私達ファン自身の壁を 再構築するための

ホール公演だったんだと思う。

一度壊して、不要な濁りを取り除いて

再度積み上げたことを証明するには

大いに意義のあった30分間のミステリーゾーン

 

終わってから名古屋と比較したら、

その会場ごとに見合った選曲を

してきたのではと思わされる。

ただ名古屋と大阪は

音楽を奏でるのに特化したホールであるという点では

方向性としては同じだったのかな。

でもきっと数日後の幕張は

全く違う性格のものになるのでは?

  

あんなに冷えていた手が、

固まっていた体が変化していく。

 ミステリーゾーンが始まってから

 私の体はどこまでも柔らかくなって、

その音を吸収するようだった。

 無脊椎動物のように捻じれ、

絡まったようにさえ見えた「謎」

 それらは一つ一つ意味を持って伸びた線で、

 意図なく揺れるようなフリをしながらも

 歴史を編み込むように正しく波打った。

 あのイカのミュージックビデオが頭の中で蘇る。

 絡まりそうで絡まらないそれはスリルか、幸福感か。

 

  

何度も同じようなことを言うが、もう一度繰り返す。

 OYSTERリリースからのこの一年間は、

「破壊」から「再生」までを

見せる為のSHOWだったのだと思う。

 Fighting NICOで一度完成を遂げたものを

惜しげもなく壊した。

  

デビューして10年音楽をやってこれた喜びを、

こんな形で表現するバンドがどこにいるんだろう。

あれから1週間経ち、

今でもフェスティバルホールの近くを通る度に思う。

私はNICO Touches the Wallsを好きになって

本当に良かった。

近づいたり離れたりしながら

一緒に11年分歳をとった。

 

NICOと出会った17歳の私から

28歳の私になるまで、

大した功績もないし幸せだったことより

悲しかったことの方が多く感じるけど

NICO Touches the Wallsを好きになった

自分の感性だけは

「おい私!おまえ最高だな!」って

盛大に褒めたたえたい。

 

 

そんな、夢が叶った夜。

嬉しくって会う人会う人に抱き着いて回った。

(そんなに友達いないけど)

わった直後は、言葉で表すのはとても難しい。

始まりも終わりも鮮やかだった

TWIST&SHOUTSHOW

どうしても一人で見たかったライブ。

終わってみれば、

1人では溢れてしまいそうな幸福感を

仲間たちとの抱擁で堰き止める。

気持ちが言葉を超えているから仕方がない。

 

次にフェスティバルホール

NICO Touches the Wallsが立つ時は

これ以上の興奮を必ず届けると、

約束してくれたような気がした。

帰り道はとても肌寒かったけど、

余分な力はすべて溶けだして、

手の冷たさなんてものはどうでもよくなって。

カツンカツンと鳴る足音は

数時間前よりずっと軽快に響いて、

幸せだなとまた地下道を歩いて帰った。

 

 

「サックス奏者だった祖父が立ったステージに立って

音楽でおじいちゃんと繋がることが夢だった。」

 

 

 

夢が叶ってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、省略部分はネタバレになります。

 

 

 

 

 

 

  

01.N極とN極~02.Broken Youth

順番に入場してきて、

あまり間隔を空けずにみっちゃん登場。

「ようこそ!」とばかりに

祥太郎さんと共に愉快に踊る。

初めてのステージで聞く

Broken Youth」は本当に良い。

NICO Touches the Wallsのこの10年とは、

「少年の向こうへもがくこと」とも言えたと思う。

誰かと比べて特別美しいわけでも

輝かしいわけでもない「僕らの勝利」が

こんなにも愛おしいものかと感じた。

 

 

03.FRITTER

何度でもいうが、

フェスティバルホールと言えばその音響。

私のような凡人であっても

圧倒的に美しいと思うその響きを

余すことなく享受するには「夢1号」のような

コーラスの美しさが際立つ完成されて尚且つ

抽象的世界観が必要だと思っていた。

その固定観念がひっくり返った光村のシャウト。

突拍子もないリズム。

曲が進むごとに、

フェスティバルホールの中に渦を生み出していた。

 

 

04.THE BUNGY

一気に流れを生み出す為のTHE BUNGY

古君のギターが鳴けば、裏をかく手拍子が、足音が

NICO Touches the Wallsを大きく煽る。

冷たかった自分の両手には既に血が巡っていて、

今日この瞬間の為だけに

柔らかくなっていく体に気が付いた。

 

 

05.まっすぐなうた

直球すぎる否定から始まるこの歌は、

この個性派ぞろいのセットリストの中では

おそらく地味な方で。

だけど埋もれない確かな存在感を発揮していた。

それはおそらく、このツアーは私にとって

「破壊」の位置づけだったから。

Fighting NICOで一旦完成したものを、

惜しげもなく壊して回って

笑っているように見えていた。

光がまっすぐ進む為には、

淀みがあってはいけないということ。

純度を上げるためには、

部分的なメンテナンスではだめということ。

と、私は解釈したい。

光線のように、どこにいてもまっすぐに

私たちを貫いたプレイだった。

 

 

 

06.ミステリーゾーン

ほとんど覚えてないに等しいですがとりあえずの記録。

 

 

MOROHA IROHA

「みんなを振り回してリバースさせたい(光村)」

この曲が頭にきた瞬間、

観測史上最大の30分間を覚悟した。

 

 

<有限不実行成仏>

MOROHA~を長めに、からの、

サビからのスタートだったかな?

ほぼ決め台詞的な感じだったけどやっぱり痺れる。

かっこいい。

 

 

Lonsome Ghost

イントロを古くんが弾き始めた瞬間の会場のざわめき。

個人的にはカベニミミ以来だろうか。

アコの時に古くんが

シェイカーを振ったリズムで手拍子が。

私はしなかったけど。

このサビも、みっちゃんの声は

フェスティバルホール中にこれでもかと伸びる。

間奏終わりの坂倉さんのベースのキメ?的なところが

カットされていて残念だったけど

ハロウィン意識で名古屋でもやったと思ってたら

やってないとのことだし、

ロンサムが聞けただけでも大満足。

 

 

<ストロベリーガール>

エレキだけど、アコに近いアレンジかな。

照明はピンク。とってもピンク。

 

 

 

<紅い爪>

紅い爪聞きたかったんだけど、

間奏だけだった気がする。

 

 

<鼓動>

絶対フェスティバルホールだから選んだと思う。

心悟さんもコーラスしていた。

最初にみっちゃんが一人で入って、

その後古くんたちも入っていって、

みっちゃんが一人高いキーを

歌う姿は吠えているようで。

どこまでも伸びて気持ちがいいんだろうな。

何かバケモノを見ているような気持ちになった。

 

 

<ページ1>

お久しぶりすぎて

「あ~、ページ1ね。はいは・・・ええええええ!?」

っていう顔芸をした人は

私を含めて50人はいたと思っている。

割と長めに歌ってくれて、

メンバーの表情を見る余裕もあった。

みんな柔らかく笑っていました。

 

 

<極東ID>

ミステリーゾーンの中で

最もテンションが上がったのが極東ID。

 最初レオかと思った。

 みっちゃん以外の全員が

「パラッパー」ってコーラスしていて驚いた。

 結構歌ってくれた。

 「瘋癲の虎」の巻き舌からのシャウト。

 ピックは握りこんだままで、

薬指と小指の間に挟む絶景は見られず。

 

 

暗転

真っ暗なステージの上から

「まだまだ続きます」という囁き声だけが聞こえる。

前から聞こえてきていることは分かっているのに

すぐ傍で言っているような錯覚さえ起こさせる。

 

 

Aulora(Plerude)

オープニングのMOROHA~と言い、Auloraと言い、

Fighting NICOを彷彿とさせるミステリーゾーン

後ろの豆電球がジンワリではなくパッと点いたのが

印象的でちょっとニヤリ。

 

 

image training X フィロローグ

 あの、タクシーが地を這う音のような

古くんのギター音がして

image trainingと思ったのもつかの間、何かが違う。

何か別のものが混じっている。

・・・「ファラララ」のコーラス。

でも対馬さんのドラムは

image trainingのリズムを刻んだまま。

個人的にはミステリーゾーン最大の大混乱の中、

みっちゃんはimage trainingの歌詞を口ずさむ。

最後のシャウト、何言ってるか分からなかったけど

体中からあふれ出るパワーは

正真正銘のロックスターだった。

 

 

>芽~(My Sweet)Eden

「目が覚めてしまえば消えるかもしれないんだ」

から入った?

ちょっと記憶が曖昧というか、

ものすごく一瞬だったような。

気づいたらEdenだったって感じ。

Eden、爽やかで、青くて、

ちょっと背伸びしている感じが愛おしい。

この大きくて美しいホールによく似合っていた。

 

 

>エーキューライセンス

しっとりしたミステリーゾーン後半戦の盛り上げ役。

そうだった、大きなうねりの中にいたんだった!

と思わせてくれる。

 

 

>ビッグフット

サビワンフレーズくらいだった記憶。

でも私の中にある絶大なるフェスティバルホール効果で

強いけど、爽快な風が一瞬だけ吹き抜けたようだった。

 

 

TokyoDreamer

ドリーマーやってほしいと思っていたので、

短い時間だったけど嬉しかった。

サビの声の伸びが最高、

ありがとうフェスティバルホール

 

 

>手をたたけ~マシマシ~手をたたけ

この組み合わせは本当に強い。

お互いの持ってるピースフルな部分が

それぞれの隙間を見事に埋めあっている。

なんのジャンルにも例えられないけど、

会場に着いたときあんなに冷たかった自分の両手が

いつの間にかしっかりと熱を持っていて

この空間の一つとして稼働しているような

幸福感が駆け巡った。

ミステリーゾーン

リバースどころかリピート希望である。

 

 

 

07.SHOW

このホール公演を象徴するかのような

ディープなアクト。

この曲の、前半はなんかウジウジしてるのに

後半になったらバチギレしてるところが

黒くて溺れそうで虜。

囁くように嘲るように歌うボーカルの妖艶さと

深いところに引きずりこむような怪しげなリズム

暗がりにポツリポツリと

明かりを点けていくようなギター。

途中、みっちゃんを照らすピンスポットが

ステージの左右からクロスし

フェスティバルホールのデコボコとした壁に

その影が映る。

壁に映った影が口を開け、

手を揺らしながら歌っている。

ああこれはきっと

白も黒にしちゃう光村龍哉の「レオ」だ。

そして「君の声に負けない」の「君」かな。

この演出にちゃんと気づけてよかった。

 

 

08.VIBRIO VULNIFICUS

まだ踊れるか?と言わんばかりに

突き上げるファンクサイン。

ファルセットの度に胸を焦がす今日だけれど

「死ぬまで揺れていたいや」

「死ぬほど揺れていたいや」も絶品。

みっちゃんももう完全にゾーンに入っているというか

本当に気持ちよく歌っているんだろうと思えた。

「前に倣え」の個性の無さへのアンチテーゼにしか聞こえない。

お手軽に誰でも楽しめる仕組みや決まりの檻から逃げ出して

自分 対 バンドもしくは音楽で

解放されて踊ってもらえるのが

一番の理想なのかな。

 

 

09.mujina

みっちゃんが指でカウント数を表して、

客席がそれに応えるあのやり取り。

ライブハウスでは

カウントの数だけ拳を突き上げていたので

私はそっちで反応しちゃったんですが

周りは手拍子していて

私は最後まで拳でしたけど、

会場変わると自然に変わるのかな。

ちょっと面白かったです。

 

 

10.渦と渦

各地で光村古村の絡みが素晴らしかった渦と渦

「走れ 旋風になって」って

「渦」をつくったらそれってTWISTER

転がるように展開するサビは

このツアーのどこで聞いても楽しかったけど

これも最後なんだなと思うと寂しくなった。

 

 

11.Funny Side Up

浅野くんの奏でる軽快なイントロが流れると、

「まだ踊れるか?」とみっちゃん。

ギターのリフが轟く瞬間に合わせて勢いよく

噴き出した銀テープは、

左から右へ流れるように落ちていった。

私のところに降ってこなかったけど、

フェスティバルホールの赤い絨毯に

その輝きが映えて素敵だった。

 

 

 

12.来世で逢いましょう

最後の曲だと言われて拗ねるオーディエンス。

フェスティバルホールは延長料金が高いんです」

とみっちゃん。

まだまだできるしまだまだやりたい気持ちが

燃えているのが分かって私はとっても嬉しかった。

「来世」なんて言わずにまた近いうちに、

今生でここに立ってほしい。

まだまだフェスティバルホールだから

聞きたい曲が沢山ある。

そんな思いが大きくなってはこみ上げた。

 

 

アンコール

 

 

01.ほっとした

みっちゃんが一人で戻ってきて、アコギを抱える。

まだ、最初に約束していた

40曲には足りていないと言う。

この夜がまだもう少し終わらないことが

こんなにも嬉しい。

みっちゃんが弾く弦の振動ひとつひとつが

ホールそのものを包んでるかのように均一に響く。

そんな中大サビ前に突然口笛を吹きだした時は

「おい、ムードどこいったんや」と

突っ込みを入れたくなるくらい笑ってしまった。

「餓鬼の使いじゃねえ

   ~絶対に笑ってはいけないアンコール~」

もしくは「ひゃっとした」と名付ける。

こんな展開さえファニーで

愛くるしいと思ってしまった。

 

 

02.Ginger lily

NICO Touches the Wallsのこれまでが

走馬灯のように流れる曲だと

去年のイイニコ直後は思っていた。

だけどNXAのツアーの中で

私自身のこの曲への思いが大きく育った。

同じことが多くの他のファンの皆の中でも

起こっていたとしたら

とても素敵なことだと無意識に頬が緩む。

どこか一点までを区切る曲ではない。

NICO Touches the Walls

フェスティバルホールに立つこの日を

私が夢見たように、

おじいちゃんと音楽でつながるこの日を

みっちゃんが夢見たように、

いつかの未来はいつまでも今日を待っている。

 

 

03.天地ガエシ

二本のギター、ベース、ドラム、バイオリンが

重なり合って天地ガエシのイントロになる瞬間は

何度味わってもドラマチック。

「もうあの雲が途切れたら引き返さないよ」

「さあ取り返そう 僕らだけの秘密の大勝利を」

というフレーズを聞きながら、

この日の大阪は本当に

秋晴れだったことを思い出していた。

きっとこれでこのSHOWは終わるんだと

思う寂しさとは反比例するかのように

曲のBPMは上がっていく。

着席したころには

「心臓の速さがMAX値の天地ガエシ

だなんて言ったけれど、

今まさにピッタリ重なるように

同じ速度を刻むようになった。

終わったと見せ掛けて、

祥太郎さん次第で繰り返すアウトロ。

3回繰り返して、

最後はみっちゃんがギターを豪快に鳴らして

本当に本当に最後のアウトロが始まって、

そして終わった。

 

 

 

完璧なステージだったと思う。

開始直後は、初めて立つ会場だからか

補いあって4+浅野くん=100%

にしていた気がしたけれど、

ミステリーゾーンを経てSHOW当たりからは

それぞれが100%のベストアクトを繰り広げていた。

 

通常のNXA時は

「ハイセンスな俺達の音楽を好きな君達もハイセンス」

とかビッグマウス叩いてたのに

この日は

「僕らは特別演奏がうまいわけでもないのに・・・」

とか言い出して会場に飲まれたのかと

思って笑ってしまった。

後から、

名古屋のお客さんの入りが良くなかったと聞いて

ちょっと落ち込んだりもしたのかしらと思った。

背伸びしすぎたとは思わない。

 

でも名古屋と大阪が中1日での開催で、

しかも名古屋がど平日ときたら

大阪行くってなると思うんですよね。

大阪もソールドしたわけじゃなかったし。

 

でも私は、

Fighting NICOで行った愛知県芸術劇場

大阪フェスティバルホールのような場所は

環境も雰囲気も「ちょっと背伸びしてきた」彼らにも

「等身大になった」彼らにも

とっても良く似合っていると思う。

(フォレストホールは行ったことない)

 

今回のことが「失敗」や「課題」

だと思われてしまっても

また必ずリベンジ、チャレンジしてほしい。

それもきっと夢をかなえることと同義だと思うから。