NICOとスピッツと私と

NICOが先か、Spitzが先か。

「        」


なんで、とか。
いやだ、とか。
そんな気持ちよりも先に、
「ああ、そうか」
って思いが滲んできました。

本当の理由は何にも知りませんが、
彼らのどことなくやり切った感じを
何となく、
そんな気がしていた、
という程度には
QUIZMASER追加公演の
前後くらいから感じていました。

ツイッターをやんわり離れたのも
それが理由です。
でも、やっぱり期待するし、
イイニコ関係の内容を
呟いてみたりもしました。
終わってしまうかもしれないね
なんてことを、
誰かに言うこともしなかったです。


第一報を知ったのは、
NICO友達からのLINE。
大阪がぐっと冷え込みを見せた
金曜日のお昼。
偶然座った25番のテーブルで
体が温まるランチメニューを選んで
ご機嫌に口に運んでいた時でした。
体温ではないところがスッと冷えて
いくのを感じました。

数時間後には
Yahoo!のトップニュースになっていて
もっと他の事でここに載ってるところを
見たかったなあなんて思いながら。

でも全く飲み込めなかった訳ではありません。
むしろ、やっぱりかとさえ思いました。


アンニュイな女性が窓辺で佇んでいるような、
そんなアルバムを作りたい

この夢は、
QUIZMASTERで果たされたのか。
あれは確かに、
セルフタイトルと言っていい作品だった。

最後に謎を残して去っていくのか。
でも「アンニュイ」をモチーフにした画像で
たばこの煙に包まれた
けだるそうな女性とかも見たことある。
そう思えばやはりあれは。


とにかく今は、この先も、
この決断に反対する気持ちはなくて。
彼らが決めた以上、
もう、誰が何と言おうと、
この先の景色を一緒に見る事はなくて。
新しい曲を聞かせてくれる事もなくて。

こんなにも縋って、
道しるべだと思って、
私自身を投影した
NICO Touches the Wallsが無くなっても、
私の人生はあっさりと続くわけで。

スピッツの魅力を
分からせてくれたことも。
ストレイテナー
出会わせてくれたことも。

感謝しています。


スピッツ
ストレイテナー

こんな大人のバンドになってほしいと
理想にしていたGRAPEVINE

これからも存在するのに
NICO Touches the Wallsが居ない。


それでもきっと、縋るものがなくても、
やっぱり、私の毎日は繰り返されるわけで。


その中で、
いつかまたねって話は、
私は今は考えられないです。
悲観しているのではなくて。

「いつかまたやろうね」なんて思いで
NICOが終わるなんて無いと思ってます。

でも何年か経ってから、
そういう話が自然に出たのなら
その時は喜びたい。


今を埋めるピースはどこにも無い。
グッバイも、アディオスも、バイバイも、
どの言葉でも言い表せない
別れの時を感じてます。
生きているのに、残るものはあるのに。

ただ、そのことだけが寂しいです。
それだけです。

 


本当に、寂しい。

NICOが掲げた「愛」の意味

 

 

原点回帰

 

 

私も良く使ってしまう言葉である。

 

自分がファンになった頃を

思わせる楽曲を出してくれた時や、

初期の楽曲を中心に

 

セットリストが構成された時、

そう思ってしまうのは無理もないと思う。

 

発信する側と受信する側で

差異があるのも含めて、

思い出や感傷に音楽が紐づくと

 

自分だけの価値観になってしまう。

もう一度言うが、仕方がないと思う。

 

彼らが存在意義を証明する術を模索した時期を

私はどうにもこうにも忘れることはできないし

好きの土台はどれである。

何度崩壊したって、きっと更地にはならない。

 

QUIZMASTERを構成する楽曲たちの中には、

どこか懐かしさを感じる。

 

しかし、確実に進化をしている。

今彼らは確かに、愛を歌っている。

 

安い感想文のようなラブソングでもなければ、

文学的かつ官能的な知性漂う愛の歌でもない。

もっとはっきり言うならば、

君 対 僕

の世界ではなく、

NICO 対 n。

 

歌を、曲を、仲間を、ファンを愛し、

偉大なる先人達を尊敬すること。

それが今の

NICO Touches the Wallsが見せる愛だと思う。

 

「思いが歪む前に、愛を歌わなくちゃ」

に対義語があるとしたら

「何世紀遡ったって全ての始まりは愛」

なんじゃないかと思う。

愛は不変だとしても、

後ろから見るか前から見るかで学ぶことが違う。

 

ニワカ雨ニモ負ケズをリリースする前、

僕らの新しいアンセムにしていきたいと言っていた。

私はそれを、ものすごく単純に、

THE BUNGYのポジションを担うことだと受け取った。

NICO Touches the Wallsのライブを象徴する曲は

これしかないと思っていたから。

 

でもその後、

天地ガエシからFunny Side Up!に至るまで

ライブを盛り上げる曲はたくさん生まれた。

 

今になって思う。

「愛を歌わなくちゃ」は、

 

気づきであり、激励であり、宣言だった。

国ならば国歌だ。

 

彼らにとって愛とは、尊敬と憧れだと思う。

目新しいことには目もくれず、

 

ずっと変わらない良質なものを

自分たちらしく踏襲していくこと。

未開の地を切り開くのも大変だが、

 

これはこれで苦労の連続だとは思う。

目立たないし、やり方としては地味だし、

アイコンにもならないだろうが、彼ららしい。

 

正直、仕掛けられた謎だとか、

クイズだとかについてはよくわからない。

だけど、MACHIGAISAGASHIは確実に、

ACO Touches the Walls

NICOのお遊びやおまけでないと証明した。

リリース前の曲をエレキでもアコでも行って、

先入観無しに両方の魅力を伝えることで。

NICOが高さなら、ACOは厚みで、壁なんだよと。

 

私がライブから得たものがそれならば、

アルバムから受け取るのは重い重い愛がいい。

 

好きなフレーズ集

好きな歌詞をつらつらと書いていくだけの記事。

順不同。

書き足していくだけのメモ記事。

 

 

 

 

 

惰性で見てたテレビ消すみたいに

生きる事を時々やめたくなる

平井堅/ノンフィクション>

共感した、という言葉は

こういう時に使うのだと思った。

人生を辞めたくなる時が私にもよくある。

でも死にたいと言えるわけでもなく。

だから泣けちゃうのかと。

---------------------------------------------

 夕日赤く染め空には鳥

あたりまえの日没の中で

サカナクション/三日月サンセット>

「夕暮れの月 赤い垂れ幕の下」

という比喩?みたいな表現の後で

「当たり前の日没」としてもう一回

言い直すかのような対比が

何度聞いても鮮やか。

--------------------------------------------- 

雨が降り止むまでは帰れない

<米津玄師/Lemon

脈略の無さが絶妙な

違和感私的名フレーズ。

雨が降ってるから帰れないんじゃなくて、

帰れない理由なら

何でもよかったんじゃないかと。

 ---------------------------------------------

貴方がいない

それでも私は今まで通り輝き

素敵でいるのよ

矢井田瞳/How...

恋してるから綺麗、美しい

に対するアンチテーゼと解釈している。

カッコよくて切ない

---------------------------------------------

丸いガラスを光に透かして

次の言葉を探してる

ストレイテナー/シーグラス>

言葉の並びの美しさで情景描写する巧みさ。

次の言葉を自然と聞き手に想像させるその余白を

最後のフレーズに持ってくるところが憎い。

 ---------------------------------------------

ほら始まるよ 危ない駆け引き

優位に立ちたいの

今後のこと 見据えて

秦基博/oppo

優位に立とうとする女と、

はいはい、とうまいことあしらう男

という私の理想像。

--------------------------------------------- 

痩せた指にキスをして

泣いたあなたを思い出すよ

これで終わりだとしても

最後のキスは忘れないよ

BONNIE PINK/Last Kiss

下手な18禁映画を見るより

BONNIE PINK聞いてる方が

よっぽどエロいと思った思春期を思い出す。

SouldiersNew York

高校受験の時によく聞いていました。

--------------------------------------------- 

でも大好きよあなたに会いたい

まだ眠れぬ夜の終わらない祈り

福山雅治/milk tea

輝けなくていいから

こんなしおらしい女性になりたかった。

「でも大好きよ」の入り方が秀逸。

「でも」が何よりの答えなんだなって。

 --------------------------------------------- 

風やあなたに背中を押されるその前に

飛び出せそうな

NICO Touches the Walls/image training

この風が「宇宙の風」だったら、

と思い馳せるのが私の病です。

 

勝気なフロントガール

まず初めに申し上げておきたいのは、
私はいついかなる時もYUKIちゃんのことは

YUKIちゃんと呼んでいる。

どんなにまじめな文章になったとしても、
YUKIと呼び捨てにすることができない。
だからずっと、

このお話はYUKIちゃんで続きます。





「forme」

もう一度デビューしたかのような

アルバムになった、
YUKIちゃんは言っていた。

それを色濃く感じさせるとしたら、
4曲目以降の怒涛のコラボ楽曲だろう。
CharaYUKIちゃんを

もってしてもCharaだし、
細野晴臣細野晴臣だと思った。

でもYUKIちゃんの声が

プロデュース内容によって
大人になったり少女になったりする様が

なんとも可愛らしく
彼女にしかできない

彼女らしいアルバムである。


とはいえ、

始めの3曲だけでも私は胸いっぱいで。
チャイムから、トロイメライ
やたらとシンクロニシティまでの

冒頭3曲は、
長い夢だったり、ドラマチックだったり、

COSMIC BOXなどで
作り上げてきたYUKI WORLDの

現時点の集大成と思えるし、

ランデブーの駆け引き、

ひみつ、二人のストーリー

の健気さとあざとさ、

プリズムのような儚さの全てを

駆け抜けた上に立ち悟るようなトロイメライ

長くなるので割愛するが、
もちろん、シングル以外の名曲たちの

要素もたっぷり含んでいる。


トロイメライアルバムが出る前から

素敵な曲だったけれど、

アルバムの中でより一層

その輝きは増しているように思う。

とにかく、好き。好きが過ぎる。完璧。
長くなったので全曲レビューは削除したけど、
好きなので、トロイメライだけでも。



02:トロイメライ
作曲自体はYUKIちゃんではないけれど、

メロディがとてもいい。
独唱のように始まり、

最後は合唱の様に終わる。

「ささやくように 祈るように

今日をまた乗り越える」
「何度でも笑うのよ

何度でも 許されていいから」
「無邪気な私には戻れないの」
「恋をして 夢をみ見て

幸せに 暮らしますように」

どんな美しい思い出よりも、
愛する人が側にいるということは、
まるで夢みたいに幸せなこと。
だから毎日を乗り越えていくんだと。
まるで私が想像するYUKIちゃんの人生。
大サビの後ろで伸びやかに高らかに

歌うYUKIちゃんの声が
本当に美しくて素敵。


YUKIちゃんが
アーティストとして、
磯谷有希として、
倉持有希として、
なぜ愛される女性なのかが

分かるようなアルバムだったと思う。

いや、彼女の作品は

いつだってそうなんだけど。
ただ今回のアルバム名「forme」が

より一層、その力を感じさせてるような。


彼女ほど、

ソロになって、

結婚して、

母になっても、

「少女の恋」と

「大人の情事」と

「母の慈しみ」

を書き分け歌い分けられる人を

私は知らない。
普通は、やはり偏りが出るものかと。
YUKIちゃん自身のポテンシャルに加え、
YO-KINGとは本当に素敵な夫婦関係が

続いているんだろうと想像する。


ミス・イエスタデイに出てくる、
いつまでも遊んでいられるといいな、は
確かキングの口癖。

でもYUKIちゃんは、

絶対的に大人になった。

大人になったことを自分でも理解し、

肯定しているにも関わらず、
少女であり、女であり、母なのだ。

「あの可愛かったYUKIちゃんが

大人になってしまった」
とは、誰も言わない。

だってYUKIちゃんは

いつだって今がサイコウなの。


ところで、

ソロになってからのYUKIちゃんは、
JAMのYUKIちゃんとは全く違う。

勝気なフロントガールの自己主張は、
バンドが止まってから

何年たっても唯一無二だけれど、

ソロになったYUKIちゃんはもっと、

ちゃんと距離をとって、
伝えるための距離をとって、

お話を聞かせてくれる妖精の様に存在する。



そのモノの見方、捉え方って、

本当にずっと不変で。
(ソロデビュー直後は

色々試行錯誤あったことは割愛する)

変わっていくことの方が容易い中で、

その強さ本当に不思議な魅力。

表現が増えていくことがあっても、不変。

ただしそれは、

JAMのボーカルではない。
今確かに存在し、私を虜にするのは、

ソロになったYUKIちゃんである。


15才で全て分かったふりをして、

涙の河を泳ぎ切って、
ハローとグッバイを繰り返して、

嘘をついて後悔して
いつの間にか大人になっていた

YUKIちゃんですが、
いつもどこまでも様々な姿に

成り分けられる彼女の存在・世界観
そのものが、私にとっては

トロイメライのようなのです。



っていうか、

私のつべこべなんていいから
公式のインタビュー読んでくれよ。
って最後に思いました。
最後に言うことじゃないけど。

http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/YUKI/forme/

21st ANNIVERSARY ROCK BAND 幕張メッセ 2019.01.19

特別な日にあえて

平凡であろうとした様に見えた。

ただそれだけのことの様でいて

「当たり前のこと」の様に振る舞う程に

「今日は特別な日」と思わされる。

それがとても洒落ていて、

見栄が無く、正直。

朗らかに笑いながら

キャッチボールをするような28曲。

終演後、足元に散らばる

4色のホログラムを目で集めながら

「これから4人でやっていく」という

ホリエさんの言葉を思う。

私はまだ夢の余韻の最中にいる。



21st ANNIVERSARY ROCK BAND

幕張メッセ

2019.01.19



4.DAY TO DAYで一気に

空気が和らいだような気がして、

涙が上がってこようとしている気配を

照明に目を細めて押し込んだ。

後のMCでホリエさんとひなっち

「DAY TO DAY」で緊張が抜けた、

と話していて、私も何かをシェアした

気持ちになった。

4曲目からライブが良くなってくる

というのは割とよくあることだと思う。

3、4曲目に起爆剤的な曲を

持ってきたりすることもあるし、

雰囲気を変えたり決定づける

ポイントであることは間違いない。

あのDAY TO DAYが

このライブの「宣言」だった。



全体を通して、

一日一日をアップデートしていった先に

未来があるって言われた気がした。

余裕でしょ、と

軽々と超えて来た日もあれば、

ギリギリなんとか体を持ち上げた時も

あったんだろう。

丁寧に積み重ねたのに、

無意味に終わった仕事もあっただろう。

でも明日が来るから毎日を

頑張るんじゃなくて、

明日を手繰り寄せる様に

生きるべきなんじゃないかと思った。

だからDAY TO DAYとか

The Future Is Nowとか

凄く響いてきたんだろう。



7.Lightning やるとは思っていたけど

実際に始まると息を止めて

見つからないように聞いていたい、

みたいな感情。

好きすぎて、

ベストの投票もこの曲だった。

 ステージ上に広がる白い布に

映るLightningの世界。

蝶、雪、汽車、

それから人のいないシアター。

冬の太陽、TRAIN、

SAD AND BEAUTIFUL WORLDが来る。

予知夢のようなヒント。

この後実際にこの3曲が続いて感動した。

(Braverは説明できなかったけれど)


10.冬の太陽の最後の一音が

吸い込んで消えたはずの雑踏が

またザワザワと聞こえてくる。

スクリーンにはVANISHの映像が流れる中、

4人は楽器を置いて捌けていく。


「センターステージとか

あるわけないよね」


と笑ったのはどれくらい前のことだったか。

入場した時も、

花道無いねと茶化したりして。

自分たちが堂々と

センターステージの側を

歩いて入場してきたことにも

気づかなかった。

埋もれた遺跡の上を

歩いているようなトリック。

アリーナの人間からすれば灯台下暗し。

スタンドの人間からすれば堂々としたそれ。


AブロックとBブロックの間の真上で

ミラーボールが生み出した乱反射の中を

メンバーが歩いてきた。

結構ラフな雰囲気で。

バンドマンが広い会場で

センターステージ使って

やることって言ったら

アコースティックって相場は決まっている。

過去に私も2度ほど

違うバンド(好きじゃないバンド)

で目にした。

VANISHと反比例する

柔和な雰囲気の中現れた4人もまた、

アコースティックするのだろうと

思った3秒後には否定された。


「俺達ひねくれてるから、

アコースティックとかやりません」

とケラケラとしたホリエアツシ

「ここにセンターステージ

作ったからって嵩増したわけじゃない」

とこちらもケラケラとしたシンペイさん。


12.VANISH、13.瞬きをしない猫、

14.KILLER TUNE、15.DSCGRPHY

センターステージというだけで異世界

Aブロックは、

バンドが放つ音の後ろにいるので

ホリエさんの声は遠くに聞こえる。

演奏も、むき出しの骨組みを

見ているかのよう。

バラバラなわけでは無くて、

組み立てた裏側、

調和する前の成分表を

説明されているような

違和感と妙な納得にわくわくする。


シンペイさんのドラム叩く時の

筋肉を後ろから見ることなんてある?

スティックを振り上げ、

振り下ろすその筋肉の動きの美しさ。

決して筋肉フェチではないのに

興奮して釘付けになっていたら、

MCの合間に幼馴染を振り向いて

笑うホリエさんを真正面から

喰らってしまって私が照れました。


4曲やり切って、

ホログラムが舞う中を

360度にありがとうを言って

センターステージを去っていきました。

お客さんの頭や背中や

ボディバッグの隙間に

ホログラムが挟まっていて

紅白のYUKIちゃんを思い出したりして。

一人で来てる女の人や

男の人とか気づいてないのが可愛い。



メインステージには、

秦さんを連れて戻ってきた。

いよいよ「灯り」が

完璧なメンバーで披露される。

間違いなく世界初。

もしかしたら一生一度きり。

「ため息も白く」と

秦さんが歌い始めた瞬間の

静寂こそ興奮の証。

OJがコーラスしてた「灯り」も

セルフカバー感があって好きだけれど、

今日の灯りの圧倒的「本物感」

ボーカリスト同士が

本気で表現し合うストーリー。

それと、九州男児同士のシンパシー。


この曲の良さって、

松本隆的な時間の流れの描き方で。

時間は流れるのに

渋滞で進まないバスとか。

やっとの思いでバスが着いて、

自然と駆け出しちゃう描写とか。

ドギマギさせておいて、

今夜どんな君に会えるだろう」

で終わるところとか。

合流する寸前、

君の後ろ姿を見つけた位のシーンで

終わるからこの曲は

心に残るんだと思います。



16.灯りが終わったのに、

帰らない秦さんと

帰そうとしないストレイテナー

まさか、この空気感。

「鱗」をやる気なのでは。


ここがセンター試験の会場なら、

正解率95%超えの正にサービス問題。

そしてホリエさんがニヤリ笑って

「鱗をやります」

正に目から鱗のボーナスタイム。



鱗は私が高校生の時にリリースされた曲。

802で聞いた時

「緑がかった君の目に映りこんだ僕は魚」

のフレーズが衝撃的だった。

正に目から・・・いや、もう良い。

当時から、個性的なベースラインの虜で。

リズムよりメロディ弾いてるし、

それが泣かせてくる。

だから鱗の個性って

亀田誠治のベースだと私は思ってて。

それがテナーになると

パンキッシュになるのがいつも驚く。


水面につま先を恐る恐るつける

みたいな叙情的なメロディが

原曲の名イントロなのに対して、

頭から情緒とか無視する思い切りの良さ。

なのに下品さは皆無。

見事なまでのテナー色。

この速さ、このキー、

このボリュームで秦さんが歌う鱗。

ちょっとだけ苦労してるように

見えなくもない秦さんの隣で、

飛び切りイキイキしているホリエアツシ

自分の曲より他人の曲やってる時の方が

ルンルンするの、

マサムネさんと同じで笑ってしまった。


秦さんが捌けて、再び4人に戻る。

「秦くんがセンチメンタルで好きって

言ってくれたから」

と、18.BoyFriendを披露し、

19.彩雲へと流れていく。

この「彩雲」は

秦くんと作った空気を消さずに

ストレイテナーのワンマンに

軌道修正するのに適役だった。


「未来の話をしたいと思います」

ホリエさんがそう言って

話し始めたバンドの未来。

「これからもこの4人でやっていく」

逃げ道を断つための宣誓ではなくて、

これは約束。

契約書も、

指切りげんまんも無いけれど、

ファンとバンドの間で

交わされた強い約束だったと思う。

そんな21.The Future Is Nowだった。


22.原色 で、2人から3人、

そして4人になっていくことは

自然な流れだった

って言っていたのを思い出した。

4人でいる状態が

原色であってほしいと。


いよいよ終わるのか、

と思わずにはいられない 

23.Melodic Storm

「恥ずかしかったいいよ。

歌える人だけ一緒に」という

フロントマンからの呼びかけに

答えるオーディエンス。

不快感のない大合唱。

手の隙間から見える4人の笑顔。

ファンとの丁度いい距離感が見事。


24.シーグラス で終わるとは

思ってなかった。

個人的に100年後にも

残したい名曲と呼んでいる美曲。

歌詞カードにはないアウトロの、

鼻唄のような「Uh~~」と

OJのドラマチックなギターの

黄金比率の絡まりが

ふわっと解けた時がライブの終わり。


4人は手を振って、

ステージから捌けていった。

アンコールの手拍子は、

もっと長くても良かったと思う。

すぐに戻ってきてくれた。

OJだけがギターを持ち、始まる緩いMC。

いつの間にか準備態勢に

入っていたホリエ&シンペイさん。

しばらく喋って

「(ひなっち)そろそろ楽器持とうか」

とホリエさん。

そこからまたしばらく喋って、

「もうやろーよ!!!」

とOJ。

いつもの茶番も、

もっと長くても良かった。



25.From Noon Till Dawn、

26.羊の群れは丘を登る

と、オープニングのような

アンコールをして

「ありがとうございました!」と

去っていくストレイテナー


「アンコールっていうのはさ~」

と京都で言っていた彼らはどこへやら。

「これじゃ終わらないから」

と言わんばかりの清々しい退場をして、

またすぐに戻ってきてくれました。


「新曲を作ってきました」

穏やかすぎる告知と、湧く客席。

「もしかしたらこの先、

ストレイテナーの音楽を

聴かなくなるかもしれない。

僕自身、昔は好きだったけど

聞かなくなった音楽沢山あります。

だけど俺達は4人で進み続けるから、

またこの先で巡り合いましょう」

哀愁ではなく余裕の声色。その希望。

MY NAME IS STRAIGHTENERツアーで

撮った客席と移動中の車窓と

メンバーの映像が流れて、

その上には歌詞が出ていて。

素直すぎる新曲 27.SPIRAL は、

大人になったこその無邪気さでした。


28.ROCKSTEADY のイントロが鳴って、

本当の本当のエンディング。

私はとうとうここで2粒ほど泣いた。

このライブを振り返って、

自分の最近の生活を省みて。


4人はカッコつけてなくって、

広い会場と7000人に

照れて笑って感謝して、

一曲一曲を丁寧に、

シャツにシワのない

アイロンがけをする様に

それはそれは丁寧に演奏していた。


王道な、言ってしまえば平凡な

セットリストだったかもしれないけど、

その全てを特別にした

要因だったんじゃないかな。

ただ一曲一曲の、その鮮度と彩度。

それが7000人に染み込んでいく浸透圧。

ただ単に、

私のテナーに対する距離感と

今日の内容のバランスが

良かっただけかもしれない。

ただこんなにも、

終わってから凄さに

気づかされるライブも珍しい。

持ち帰って初めて気づく愛おしい染み。


時間が経って、

経年劣化するのも味だけれど

そうなる前にまた

早くライブを見せてください

21st ANNIVERSARY ROCK BAND 幕張メッセ 2019.01.19

特別な日にあえて

平凡であろうとした様に見えた。

ただそれだけのことの様でいて

「当たり前のこと」の様に振る舞う程に

「今日は特別な日」と思わされる。

それがとても洒落ていて、

見栄が無く、正直。

朗らかに笑いながら

キャッチボールをするような28曲。

終演後、足元に散らばる

4色のホログラムを目で集めながら

「これから4人でやっていく」という

ホリエさんの言葉を思う。

私はまだ夢の余韻の最中にいる。



21st ANNIVERSARY ROCK BAND

幕張メッセ

2019.01.19



4.DAY TO DAYで一気に

空気が和らいだような気がして、

涙が上がってこようとしている気配を

照明に目を細めて押し込んだ。

後のMCでホリエさんとひなっち

「DAY TO DAY」で緊張が抜けた、

と話していて、私も何かをシェアした

気持ちになった。

4曲目からライブが良くなってくる

というのは割とよくあることだと思う。

3、4曲目に起爆剤的な曲を

持ってきたりすることもあるし、

雰囲気を変えたり決定づける

ポイントであることは間違いない。

あのDAY TO DAYが

このライブの「宣言」だった。



全体を通して、

一日一日をアップデートしていった先に

未来があるって言われた気がした。

余裕でしょ、と

軽々と超えて来た日もあれば、

ギリギリなんとか体を持ち上げた時も

あったんだろう。

丁寧に積み重ねたのに、

無意味に終わった仕事もあっただろう。

でも明日が来るから毎日を

頑張るんじゃなくて、

明日を手繰り寄せる様に

生きるべきなんじゃないかと思った。

だからDAY TO DAYとか

The Future Is Nowとか

凄く響いてきたんだろう。



7.Lightning やるとは思っていたけど

実際に始まると息を止めて

見つからないように聞いていたい、

みたいな感情。

好きすぎて、

ベストの投票もこの曲だった。

 ステージ上に広がる白い布に

映るLightningの世界。

蝶、雪、汽車、

それから人のいないシアター。

冬の太陽、TRAIN、

SAD AND BEAUTIFUL WORLDが来る。

予知夢のようなヒント。

この後実際にこの3曲が続いて感動した。

(Braverは説明できなかったけれど)


10.冬の太陽の最後の一音が

吸い込んで消えたはずの雑踏が

またザワザワと聞こえてくる。

スクリーンにはVANISHの映像が流れる中、

4人は楽器を置いて捌けていく。


「センターステージとか

あるわけないよね」


と笑ったのはどれくらい前のことだったか。

入場した時も、

花道無いねと茶化したりして。

自分たちが堂々と

センターステージの側を

歩いて入場してきたことにも

気づかなかった。

埋もれた遺跡の上を

歩いているようなトリック。

アリーナの人間からすれば灯台下暗し。

スタンドの人間からすれば堂々としたそれ。


AブロックとBブロックの間の真上で

ミラーボールが生み出した乱反射の中を

メンバーが歩いてきた。

結構ラフな雰囲気で。

バンドマンが広い会場で

センターステージ使って

やることって言ったら

アコースティックって相場は決まっている。

過去に私も2度ほど

違うバンド(好きじゃないバンド)

で目にした。

VANISHと反比例する

柔和な雰囲気の中現れた4人もまた、

アコースティックするのだろうと

思った3秒後には否定された。


「俺達ひねくれてるから、

アコースティックとかやりません」

とケラケラとしたホリエアツシ

「ここにセンターステージ

作ったからって嵩増したわけじゃない」

とこちらもケラケラとしたシンペイさん。


12.VANISH、13.瞬きをしない猫、

14.KILLER TUNE、15.DSCGRPHY

センターステージというだけで異世界

Aブロックは、

バンドが放つ音の後ろにいるので

ホリエさんの声は遠くに聞こえる。

演奏も、むき出しの骨組みを

見ているかのよう。

バラバラなわけでは無くて、

組み立てた裏側、

調和する前の成分表を

説明されているような

違和感と妙な納得にわくわくする。


シンペイさんのドラム叩く時の

筋肉を後ろから見ることなんてある?

スティックを振り上げ、

振り下ろすその筋肉の動きの美しさ。

決して筋肉フェチではないのに

興奮して釘付けになっていたら、

MCの合間に幼馴染を振り向いて

笑うホリエさんを真正面から

喰らってしまって私が照れました。


4曲やり切って、

ホログラムが舞う中を

360度にありがとうを言って

センターステージを去っていきました。

お客さんの頭や背中や

ボディバッグの隙間に

ホログラムが挟まっていて

紅白のYUKIちゃんを思い出したりして。

一人で来てる女の人や

男の人とか気づいてないのが可愛い。



メインステージには、

秦さんを連れて戻ってきた。

いよいよ「灯り」が

完璧なメンバーで披露される。

間違いなく世界初。

もしかしたら一生一度きり。

「ため息も白く」と

秦さんが歌い始めた瞬間の

静寂こそ興奮の証。

OJがコーラスしてた「灯り」も

セルフカバー感があって好きだけれど、

今日の灯りの圧倒的「本物感」

ボーカリスト同士が

本気で表現し合うストーリー。

それと、九州男児同士のシンパシー。


この曲の良さって、

松本隆的な時間の流れの描き方で。

時間は流れるのに

渋滞で進まないバスとか。

やっとの思いでバスが着いて、

自然と駆け出しちゃう描写とか。

ドギマギさせておいて、

今夜どんな君に会えるだろう」

で終わるところとか。

合流する寸前、

君の後ろ姿を見つけた位のシーンで

終わるからこの曲は

心に残るんだと思います。



16.灯りが終わったのに、

帰らない秦さんと

帰そうとしないストレイテナー

まさか、この空気感。

「鱗」をやる気なのでは。


ここがセンター試験の会場なら、

正解率95%超えの正にサービス問題。

そしてホリエさんがニヤリ笑って

「鱗をやります」

正に目から鱗のボーナスタイム。



鱗は私が高校生の時にリリースされた曲。

802で聞いた時

「緑がかった君の目に映りこんだ僕は魚」

のフレーズが衝撃的だった。

正に目から・・・いや、もう良い。

当時から、個性的なベースラインの虜で。

リズムよりメロディ弾いてるし、

それが泣かせてくる。

だから鱗の個性って

亀田誠治のベースだと私は思ってて。

それがテナーになると

パンキッシュになるのがいつも驚く。


水面につま先を恐る恐るつける

みたいな叙情的なメロディが

原曲の名イントロなのに対して、

頭から情緒とか無視する思い切りの良さ。

なのに下品さは皆無。

見事なまでのテナー色。

この速さ、このキー、

このボリュームで秦さんが歌う鱗。

ちょっとだけ苦労してるように

見えなくもない秦さんの隣で、

飛び切りイキイキしているホリエアツシ

自分の曲より他人の曲やってる時の方が

ルンルンするの、

マサムネさんと同じで笑ってしまった。


秦さんが捌けて、再び4人に戻る。

「秦くんがセンチメンタルで好きって

言ってくれたから」

と、18.BoyFriendを披露し、

19.彩雲へと流れていく。

この「彩雲」は

秦くんと作った空気を消さずに

ストレイテナーのワンマンに

軌道修正するのに適役だった。


「未来の話をしたいと思います」

ホリエさんがそう言って

話し始めたバンドの未来。

「これからもこの4人でやっていく」

逃げ道を断つための宣誓ではなくて、

これは約束。

契約書も、

指切りげんまんも無いけれど、

ファンとバンドの間で

交わされた強い約束だったと思う。

そんな21.The Future Is Nowだった。


22.原色 で、2人から3人、

そして4人になっていくことは

自然な流れだった

って言っていたのを思い出した。

4人でいる状態が

原色であってほしいと。


いよいよ終わるのか、

と思わずにはいられない 

23.Melodic Storm

「恥ずかしかったいいよ。

歌える人だけ一緒に」という

フロントマンからの呼びかけに

答えるオーディエンス。

不快感のない大合唱。

手の隙間から見える4人の笑顔。

ファンとの丁度いい距離感が見事。


24.シーグラス で終わるとは

思ってなかった。

個人的に100年後にも

残したい名曲と呼んでいる美曲。

歌詞カードにはないアウトロの、

鼻唄のような「Uh~~」と

OJのドラマチックなギターの

黄金比率の絡まりが

ふわっと解けた時がライブの終わり。


4人は手を振って、

ステージから捌けていった。

アンコールの手拍子は、

もっと長くても良かったと思う。

すぐに戻ってきてくれた。

OJだけがギターを持ち、始まる緩いMC。

いつの間にか準備態勢に

入っていたホリエ&シンペイさん。

しばらく喋って

「(ひなっち)そろそろ楽器持とうか」

とホリエさん。

そこからまたしばらく喋って、

「もうやろーよ!!!」

とOJ。

いつもの茶番も、

もっと長くても良かった。



25.From Noon Till Dawn、

26.羊の群れは丘を登る

と、オープニングのような

アンコールをして

「ありがとうございました!」と

去っていくストレイテナー


「アンコールっていうのはさ~」

と京都で言っていた彼らはどこへやら。

「これじゃ終わらないから」

と言わんばかりの清々しい退場をして、

またすぐに戻ってきてくれました。


「新曲を作ってきました」

穏やかすぎる告知と、湧く客席。

「もしかしたらこの先、

ストレイテナーの音楽を

聴かなくなるかもしれない。

僕自身、昔は好きだったけど

聞かなくなった音楽沢山あります。

だけど俺達は4人で進み続けるから、

またこの先で巡り合いましょう」

哀愁ではなく余裕の声色。その希望。

MY NAME IS STRAITHTNERツアーで

撮った客席と移動中の車窓と

メンバーの映像が流れて、

その上には歌詞が出ていて。

素直すぎる新曲 27.SPIRAL は、

大人になったこその無邪気さでした。


28.ROCKSTEADY のイントロが鳴って、

本当の本当のエンディング。

私はとうとうここで2粒ほど泣いた。

このライブを振り返って、

自分の最近の生活を省みて。


4人はカッコつけてなくって、

広い会場と7000人に

照れて笑って感謝して、

一曲一曲を丁寧に、

シャツにシワのない

アイロンがけをする様に

それはそれは丁寧に演奏していた。


王道な、言ってしまえば平凡な

セットリストだったかもしれないけど、

その全てを特別にした

要因だったんじゃないかな。

ただ一曲一曲の、その鮮度と彩度。

それが7000人に染み込んでいく浸透圧。

ただ単に、

私のテナーに対する距離感と

今日の内容のバランスが

良かっただけかもしれない。

ただこんなにも、

終わってから凄さに

気づかされるライブも珍しい。

持ち帰って初めて気づく愛おしい染み。


時間が経って、

経年劣化するのも味だけれど

そうなる前にまた

早くライブを見せてください

21st ANNIVERSARY ROCK BAND 幕張メッセ 2019.01.19

特別な日にあえて

平凡であろうとした様に見えた。

ただそれだけのことの様でいて

「当たり前のこと」の様に振る舞う程に

「今日は特別な日」と思わされる。

それがとても洒落ていて、

見栄が無く、正直。

朗らかに笑いながら

キャッチボールをするような28曲。

終演後、足元に散らばる

4色のホログラムを目で集めながら

「これから4人でやっていく」という

ホリエさんの言葉を思う。

私はまだ夢の余韻の最中にいる。



21st ANNIVERSARY ROCK BAND

幕張メッセ

2019.01.19



4.DAY TO DAYで一気に

空気が和らいだような気がして、

涙が上がってこようとしている気配を

照明に目を細めて押し込んだ。

後のMCでホリエさんとひなっち

「DAY TO DAY」で緊張が抜けた、

と話していて、私も何かをシェアした

気持ちになった。

4曲目からライブが良くなってくる

というのは割とよくあることだと思う。

3、4曲目に起爆剤的な曲を

持ってきたりすることもあるし、

雰囲気を変えたり決定づける

ポイントであることは間違いない。

あのDAY TO DAYが

このライブの「宣言」だった。



全体を通して、

一日一日をアップデートしていった先に

未来があるって言われた気がした。

余裕でしょ、と

軽々と超えて来た日もあれば、

ギリギリなんとか体を持ち上げた時も

あったんだろう。

丁寧に積み重ねたのに、

無意味に終わった仕事もあっただろう。

でも明日が来るから毎日を

頑張るんじゃなくて、

明日を手繰り寄せる様に

生きるべきなんじゃないかと思った。

だからDAY TO DAYとか

The Future Is Nowとか

凄く響いてきたんだろう。



7.Lightning やるとは思っていたけど

実際に始まると息を止めて

見つからないように聞いていたい、

みたいな感情。

好きすぎて、

ベストの投票もこの曲だった。

 ステージ上に広がる白い布に

映るLightningの世界。

蝶、雪、汽車、

それから人のいないシアター。

冬の太陽、TRAIN、

SAD AND BEAUTIFUL WORLDが来る。

予知夢のようなヒント。

この後実際にこの3曲が続いて感動した。

(Braverは説明できなかったけれど)


10.冬の太陽の最後の一音が

吸い込んで消えたはずの雑踏が

またザワザワと聞こえてくる。

スクリーンにはVANISHの映像が流れる中、

4人は楽器を置いて捌けていく。


「センターステージとか

あるわけないよね」


と笑ったのはどれくらい前のことだったか。

入場した時も、

花道無いねと茶化したりして。

自分たちが堂々と

センターステージの側を

歩いて入場してきたことにも

気づかなかった。

埋もれた遺跡の上を

歩いているようなトリック。

アリーナの人間からすれば灯台下暗し。

スタンドの人間からすれば堂々としたそれ。


AブロックとBブロックの間の真上で

ミラーボールが生み出した乱反射の中を

メンバーが歩いてきた。

結構ラフな雰囲気で。

バンドマンが広い会場で

センターステージ使って

やることって言ったら

アコースティックって相場は決まっている。

過去に私も2度ほど

違うバンド(好きじゃないバンド)

で目にした。

VANISHと反比例する

柔和な雰囲気の中現れた4人もまた、

アコースティックするのだろうと

思った3秒後には否定された。


「俺達ひねくれてるから、

アコースティックとかやりません」

とケラケラとしたホリエアツシ

「ここにセンターステージ

作ったからって嵩増したわけじゃない」

とこちらもケラケラとしたシンペイさん。


12.VANISH、13.瞬きをしない猫、

14.KILLER TUNE、15.DSCGRPHY

センターステージというだけで異世界

Aブロックは、

バンドが放つ音の後ろにいるので

ホリエさんの声は遠くに聞こえる。

演奏も、むき出しの骨組みを

見ているかのよう。

バラバラなわけでは無くて、

組み立てた裏側、

調和する前の成分表を

説明されているような

違和感と妙な納得にわくわくする。


シンペイさんのドラム叩く時の

筋肉を後ろから見ることなんてある?

スティックを振り上げ、

振り下ろすその筋肉の動きの美しさ。

決して筋肉フェチではないのに

興奮して釘付けになっていたら、

MCの合間に幼馴染を振り向いて

笑うホリエさんを真正面から

喰らってしまって私が照れました。


4曲やり切って、

ホログラムが舞う中を

360度にありがとうを言って

センターステージを去っていきました。

お客さんの頭や背中や

ボディバッグの隙間に

ホログラムが挟まっていて

紅白のYUKIちゃんを思い出したりして。

一人で来てる女の人や

男の人とか気づいてないのが可愛い。



メインステージには、

秦さんを連れて戻ってきた。

いよいよ「灯り」が

完璧なメンバーで披露される。

間違いなく世界初。

もしかしたら一生一度きり。

「ため息も白く」と

秦さんが歌い始めた瞬間の

静寂こそ興奮の証。

OJがコーラスしてた「灯り」も

セルフカバー感があって好きだけれど、

今日の灯りの圧倒的「本物感」

ボーカリスト同士が

本気で表現し合うストーリー。

それと、九州男児同士のシンパシー。


この曲の良さって、

松本隆的な時間の流れの描き方で。

時間は流れるのに

渋滞で進まないバスとか。

やっとの思いでバスが着いて、

自然と駆け出しちゃう描写とか。

ドギマギさせておいて、

今夜どんな君に会えるだろう」

で終わるところとか。

合流する寸前、

君の後ろ姿を見つけた位のシーンで

終わるからこの曲は

心に残るんだと思います。



16.灯りが終わったのに、

帰らない秦さんと

帰そうとしないストレイテナー

まさか、この空気感。

「鱗」をやる気なのでは。


ここがセンター試験の会場なら、

正解率95%超えの正にサービス問題。

そしてホリエさんがニヤリ笑って

「鱗をやります」

正に目から鱗のボーナスタイム。



鱗は私が高校生の時にリリースされた曲。

802で聞いた時

「緑がかった君の目に映りこんだ僕は魚」

のフレーズが衝撃的だった。

正に目から・・・いや、もう良い。

当時から、個性的なベースラインの虜で。

リズムよりメロディ弾いてるし、

それが泣かせてくる。

だから鱗の個性って

亀田誠治のベースだと私は思ってて。

それがテナーになると

パンキッシュになるのがいつも驚く。


水面につま先を恐る恐るつける

みたいな叙情的なメロディが

原曲の名イントロなのに対して、

頭から情緒とか無視する思い切りの良さ。

なのに下品さは皆無。

見事なまでのテナー色。

この速さ、このキー、

このボリュームで秦さんが歌う鱗。

ちょっとだけ苦労してるように

見えなくもない秦さんの隣で、

飛び切りイキイキしているホリエアツシ

自分の曲より他人の曲やってる時の方が

ルンルンするの、

マサムネさんと同じで笑ってしまった。


秦さんが捌けて、再び4人に戻る。

「秦くんがセンチメンタルで好きって

言ってくれたから」

と、18.BoyFriendを披露し、

19.彩雲へと流れていく。

この「彩雲」は

秦くんと作った空気を消さずに

ストレイテナーのワンマンに

軌道修正するのに適役だった。


「未来の話をしたいと思います」

ホリエさんがそう言って

話し始めたバンドの未来。

「これからもこの4人でやっていく」

逃げ道を断つための宣誓ではなくて、

これは約束。

契約書も、

指切りげんまんも無いけれど、

ファンとバンドの間で

交わされた強い約束だったと思う。

そんな21.The Future Is Nowだった。


22.原色 で、2人から3人、

そして4人になっていくことは

自然な流れだった

って言っていたのを思い出した。

4人でいる状態が

原色であってほしいと。


いよいよ終わるのか、

と思わずにはいられない 

23.Melodic Storm

「恥ずかしかったいいよ。

歌える人だけ一緒に」という

フロントマンからの呼びかけに

答えるオーディエンス。

不快感のない大合唱。

手の隙間から見える4人の笑顔。

ファンとの丁度いい距離感が見事。


24.シーグラス で終わるとは

思ってなかった。

個人的に100年後にも

残したい名曲と呼んでいる美曲。

歌詞カードにはないアウトロの、

鼻唄のような「Uh~~」と

OJのドラマチックなギターの

黄金比率の絡まりが

ふわっと解けた時がライブの終わり。


4人は手を振って、

ステージから捌けていった。

アンコールの手拍子は、

もっと長くても良かったと思う。

すぐに戻ってきてくれた。

OJだけがギターを持ち、始まる緩いMC。

いつの間にか準備態勢に

入っていたホリエ&シンペイさん。

しばらく喋って

「(ひなっち)そろそろ楽器持とうか」

とホリエさん。

そこからまたしばらく喋って、

「もうやろーよ!!!」

とOJ。

いつもの茶番も、

もっと長くても良かった。



25.From Noon Till Dawn、

26.羊の群れは丘を登る

と、オープニングのような

アンコールをして

「ありがとうございました!」と

去っていくストレイテナー


「アンコールっていうのはさ~」

と京都で言っていた彼らはどこへやら。

「これじゃ終わらないから」

と言わんばかりの清々しい退場をして、

またすぐに戻ってきてくれました。


「新曲を作ってきました」

穏やかすぎる告知と、湧く客席。

「もしかしたらこの先、

ストレイテナーの音楽を

聴かなくなるかもしれない。

僕自身、昔は好きだったけど

聞かなくなった音楽沢山あります。

だけど俺達は4人で進み続けるから、

またこの先で巡り合いましょう」

哀愁ではなく余裕の声色。その希望。

MY NAME IS STRAITHTNERツアーで

撮った客席と移動中の車窓と

メンバーの映像が流れて、

その上には歌詞が出ていて。

素直すぎる新曲 27.SPIRAL は、

大人になったこその無邪気さでした。


28.ROCKSTEADY のイントロが鳴って、

本当の本当のエンディング。

私はとうとうここで2粒ほど泣いた。

このライブを振り返って、

自分の最近の生活を省みて。


4人はカッコつけてなくって、

広い会場と7000人に

照れて笑って感謝して、

一曲一曲を丁寧に、

シャツにシワのない

アイロンがけをする様に

それはそれは丁寧に演奏していた。


王道な、言ってしまえば平凡な

セットリストだったかもしれないけど、

その全てを特別にした

要因だったんじゃないかな。

ただ一曲一曲の、その鮮度と彩度。

それが7000人に染み込んでいく浸透圧。

ただ単に、

私のテナーに対する距離感と

今日の内容のバランスが

良かっただけかもしれない。

ただこんなにも、

終わってから凄さに

気づかされるライブも珍しい。

持ち帰って初めて気づく愛おしい染み。


時間が経って、

経年劣化するのも味だけれど

そうなる前にまた

早くライブを見せてください