NICOとスピッツと私と

NICOが先か、Spitzが先か。

21st ANNIVERSARY ROCK BAND 幕張メッセ 2019.01.19

特別な日にあえて

平凡であろうとした様に見えた。

ただそれだけのことの様でいて

「当たり前のこと」の様に振る舞う程に

「今日は特別な日」と思わされる。

それがとても洒落ていて、

見栄が無く、正直。

朗らかに笑いながら

キャッチボールをするような28曲。

終演後、足元に散らばる

4色のホログラムを目で集めながら

「これから4人でやっていく」という

ホリエさんの言葉を思う。

私はまだ夢の余韻の最中にいる。



21st ANNIVERSARY ROCK BAND

幕張メッセ

2019.01.19



4.DAY TO DAYで一気に

空気が和らいだような気がして、

涙が上がってこようとしている気配を

照明に目を細めて押し込んだ。

後のMCでホリエさんとひなっち

「DAY TO DAY」で緊張が抜けた、

と話していて、私も何かをシェアした

気持ちになった。

4曲目からライブが良くなってくる

というのは割とよくあることだと思う。

3、4曲目に起爆剤的な曲を

持ってきたりすることもあるし、

雰囲気を変えたり決定づける

ポイントであることは間違いない。

あのDAY TO DAYが

このライブの「宣言」だった。



全体を通して、

一日一日をアップデートしていった先に

未来があるって言われた気がした。

余裕でしょ、と

軽々と超えて来た日もあれば、

ギリギリなんとか体を持ち上げた時も

あったんだろう。

丁寧に積み重ねたのに、

無意味に終わった仕事もあっただろう。

でも明日が来るから毎日を

頑張るんじゃなくて、

明日を手繰り寄せる様に

生きるべきなんじゃないかと思った。

だからDAY TO DAYとか

The Future Is Nowとか

凄く響いてきたんだろう。



7.Lightning やるとは思っていたけど

実際に始まると息を止めて

見つからないように聞いていたい、

みたいな感情。

好きすぎて、

ベストの投票もこの曲だった。

 ステージ上に広がる白い布に

映るLightningの世界。

蝶、雪、汽車、

それから人のいないシアター。

冬の太陽、TRAIN、

SAD AND BEAUTIFUL WORLDが来る。

予知夢のようなヒント。

この後実際にこの3曲が続いて感動した。

(Braverは説明できなかったけれど)


10.冬の太陽の最後の一音が

吸い込んで消えたはずの雑踏が

またザワザワと聞こえてくる。

スクリーンにはVANISHの映像が流れる中、

4人は楽器を置いて捌けていく。


「センターステージとか

あるわけないよね」


と笑ったのはどれくらい前のことだったか。

入場した時も、

花道無いねと茶化したりして。

自分たちが堂々と

センターステージの側を

歩いて入場してきたことにも

気づかなかった。

埋もれた遺跡の上を

歩いているようなトリック。

アリーナの人間からすれば灯台下暗し。

スタンドの人間からすれば堂々としたそれ。


AブロックとBブロックの間の真上で

ミラーボールが生み出した乱反射の中を

メンバーが歩いてきた。

結構ラフな雰囲気で。

バンドマンが広い会場で

センターステージ使って

やることって言ったら

アコースティックって相場は決まっている。

過去に私も2度ほど

違うバンド(好きじゃないバンド)

で目にした。

VANISHと反比例する

柔和な雰囲気の中現れた4人もまた、

アコースティックするのだろうと

思った3秒後には否定された。


「俺達ひねくれてるから、

アコースティックとかやりません」

とケラケラとしたホリエアツシ

「ここにセンターステージ

作ったからって嵩増したわけじゃない」

とこちらもケラケラとしたシンペイさん。


12.VANISH、13.瞬きをしない猫、

14.KILLER TUNE、15.DSCGRPHY

センターステージというだけで異世界

Aブロックは、

バンドが放つ音の後ろにいるので

ホリエさんの声は遠くに聞こえる。

演奏も、むき出しの骨組みを

見ているかのよう。

バラバラなわけでは無くて、

組み立てた裏側、

調和する前の成分表を

説明されているような

違和感と妙な納得にわくわくする。


シンペイさんのドラム叩く時の

筋肉を後ろから見ることなんてある?

スティックを振り上げ、

振り下ろすその筋肉の動きの美しさ。

決して筋肉フェチではないのに

興奮して釘付けになっていたら、

MCの合間に幼馴染を振り向いて

笑うホリエさんを真正面から

喰らってしまって私が照れました。


4曲やり切って、

ホログラムが舞う中を

360度にありがとうを言って

センターステージを去っていきました。

お客さんの頭や背中や

ボディバッグの隙間に

ホログラムが挟まっていて

紅白のYUKIちゃんを思い出したりして。

一人で来てる女の人や

男の人とか気づいてないのが可愛い。



メインステージには、

秦さんを連れて戻ってきた。

いよいよ「灯り」が

完璧なメンバーで披露される。

間違いなく世界初。

もしかしたら一生一度きり。

「ため息も白く」と

秦さんが歌い始めた瞬間の

静寂こそ興奮の証。

OJがコーラスしてた「灯り」も

セルフカバー感があって好きだけれど、

今日の灯りの圧倒的「本物感」

ボーカリスト同士が

本気で表現し合うストーリー。

それと、九州男児同士のシンパシー。


この曲の良さって、

松本隆的な時間の流れの描き方で。

時間は流れるのに

渋滞で進まないバスとか。

やっとの思いでバスが着いて、

自然と駆け出しちゃう描写とか。

ドギマギさせておいて、

今夜どんな君に会えるだろう」

で終わるところとか。

合流する寸前、

君の後ろ姿を見つけた位のシーンで

終わるからこの曲は

心に残るんだと思います。



16.灯りが終わったのに、

帰らない秦さんと

帰そうとしないストレイテナー

まさか、この空気感。

「鱗」をやる気なのでは。


ここがセンター試験の会場なら、

正解率95%超えの正にサービス問題。

そしてホリエさんがニヤリ笑って

「鱗をやります」

正に目から鱗のボーナスタイム。



鱗は私が高校生の時にリリースされた曲。

802で聞いた時

「緑がかった君の目に映りこんだ僕は魚」

のフレーズが衝撃的だった。

正に目から・・・いや、もう良い。

当時から、個性的なベースラインの虜で。

リズムよりメロディ弾いてるし、

それが泣かせてくる。

だから鱗の個性って

亀田誠治のベースだと私は思ってて。

それがテナーになると

パンキッシュになるのがいつも驚く。


水面につま先を恐る恐るつける

みたいな叙情的なメロディが

原曲の名イントロなのに対して、

頭から情緒とか無視する思い切りの良さ。

なのに下品さは皆無。

見事なまでのテナー色。

この速さ、このキー、

このボリュームで秦さんが歌う鱗。

ちょっとだけ苦労してるように

見えなくもない秦さんの隣で、

飛び切りイキイキしているホリエアツシ

自分の曲より他人の曲やってる時の方が

ルンルンするの、

マサムネさんと同じで笑ってしまった。


秦さんが捌けて、再び4人に戻る。

「秦くんがセンチメンタルで好きって

言ってくれたから」

と、18.BoyFriendを披露し、

19.彩雲へと流れていく。

この「彩雲」は

秦くんと作った空気を消さずに

ストレイテナーのワンマンに

軌道修正するのに適役だった。


「未来の話をしたいと思います」

ホリエさんがそう言って

話し始めたバンドの未来。

「これからもこの4人でやっていく」

逃げ道を断つための宣誓ではなくて、

これは約束。

契約書も、

指切りげんまんも無いけれど、

ファンとバンドの間で

交わされた強い約束だったと思う。

そんな21.The Future Is Nowだった。


22.原色 で、2人から3人、

そして4人になっていくことは

自然な流れだった

って言っていたのを思い出した。

4人でいる状態が

原色であってほしいと。


いよいよ終わるのか、

と思わずにはいられない 

23.Melodic Storm

「恥ずかしかったいいよ。

歌える人だけ一緒に」という

フロントマンからの呼びかけに

答えるオーディエンス。

不快感のない大合唱。

手の隙間から見える4人の笑顔。

ファンとの丁度いい距離感が見事。


24.シーグラス で終わるとは

思ってなかった。

個人的に100年後にも

残したい名曲と呼んでいる美曲。

歌詞カードにはないアウトロの、

鼻唄のような「Uh~~」と

OJのドラマチックなギターの

黄金比率の絡まりが

ふわっと解けた時がライブの終わり。


4人は手を振って、

ステージから捌けていった。

アンコールの手拍子は、

もっと長くても良かったと思う。

すぐに戻ってきてくれた。

OJだけがギターを持ち、始まる緩いMC。

いつの間にか準備態勢に

入っていたホリエ&シンペイさん。

しばらく喋って

「(ひなっち)そろそろ楽器持とうか」

とホリエさん。

そこからまたしばらく喋って、

「もうやろーよ!!!」

とOJ。

いつもの茶番も、

もっと長くても良かった。



25.From Noon Till Dawn、

26.羊の群れは丘を登る

と、オープニングのような

アンコールをして

「ありがとうございました!」と

去っていくストレイテナー


「アンコールっていうのはさ~」

と京都で言っていた彼らはどこへやら。

「これじゃ終わらないから」

と言わんばかりの清々しい退場をして、

またすぐに戻ってきてくれました。


「新曲を作ってきました」

穏やかすぎる告知と、湧く客席。

「もしかしたらこの先、

ストレイテナーの音楽を

聴かなくなるかもしれない。

僕自身、昔は好きだったけど

聞かなくなった音楽沢山あります。

だけど俺達は4人で進み続けるから、

またこの先で巡り合いましょう」

哀愁ではなく余裕の声色。その希望。

MY NAME IS STRAIGHTENERツアーで

撮った客席と移動中の車窓と

メンバーの映像が流れて、

その上には歌詞が出ていて。

素直すぎる新曲 27.SPIRAL は、

大人になったこその無邪気さでした。


28.ROCKSTEADY のイントロが鳴って、

本当の本当のエンディング。

私はとうとうここで2粒ほど泣いた。

このライブを振り返って、

自分の最近の生活を省みて。


4人はカッコつけてなくって、

広い会場と7000人に

照れて笑って感謝して、

一曲一曲を丁寧に、

シャツにシワのない

アイロンがけをする様に

それはそれは丁寧に演奏していた。


王道な、言ってしまえば平凡な

セットリストだったかもしれないけど、

その全てを特別にした

要因だったんじゃないかな。

ただ一曲一曲の、その鮮度と彩度。

それが7000人に染み込んでいく浸透圧。

ただ単に、

私のテナーに対する距離感と

今日の内容のバランスが

良かっただけかもしれない。

ただこんなにも、

終わってから凄さに

気づかされるライブも珍しい。

持ち帰って初めて気づく愛おしい染み。


時間が経って、

経年劣化するのも味だけれど

そうなる前にまた

早くライブを見せてください